裏面の楽しみ

 「私の履歴書」は武田薬品工業会長・武田國男氏。始まってまだ10回くらいですが、目が離せない。これ、ご本人は若気のいたり的気分で書いているのかもしれないけど、内容読むとボンボンというものは周りに何とかしてもらえるご身分なんだなあということがよく分かる一品。
 以下要約

・学生時代、女性の多い職場(デパートなど)でアルバイトをしたかったが、父の会社でなければバイトは認めないと言われしぶしぶ武田薬品でバイトしていた。
・ある日明日入社試験をやるから学生服を着てくるよう言われた。周りは必死に受験していたが、自分は全然分からなかったので筆記は白紙だった。係官に「とにかく何か書くように」とささやかれ、2,3行適当に書いた。
・面接に進んだら偉いさんのまん中に親父がいた。たいしたことは言えなかった。
・でも合格した。
・研修のレポートが書けず上司に「代わりに書いてください」と頼んだらあっさりひきうけてくれた。
経理に配属された。何年か仕事していたらある日親父が「フランスに留学しろ」と言った。大阪にはめぼしい学校がなかったので、春に東京のアテネフランセに入学した。東京の貿易関係の部署に辞令が出たが、内実はアテネフランセに通っていた。
・その年の夏にはフランスへ留学した。フランスには支社がなかったのでドイツ支社勤務ということで辞令が出たが、内実はフランス留学だった。
・父親が社外役員をやってる会社の関係者がフランスの学校の手配もしてくれた。気楽だった。
・下宿はかなりひどいところだった。副社長(親戚の叔父さん)が様子を見にきた。よくあんなところに住んでるなあといわれた。
・しばらくして親父が様子を見に来た。「ひどい下宿らしいなあ。移ったらどうや」と言われ引っ越した。その後は4〜5回引っ越した。引越し癖がついた。

 これって「若だんなはん」でないとできないことですよ。すごいのはこういうことができるのは恵まれた環境があるからだ、ってことにご本人が気づいてないってことです(わざとそういう回顧の仕方をしてないだけかもしれませんけど)。ちょっとした若気のいたりのエピソードにみえる。大企業ってそんな簡単に社員を海外留学させてくれるもんなんですか。私大企業の中の人じゃないのでよく分からないんですが。それに研修レポート上司に書かせるなんて、ボンボンならではの行動です。新入社員の態度じゃありません。
 今後の展開が楽しみです。
 あとは渡辺淳一センセイの「愛の流刑地」。主人公の元ベストセラー作家は時代小説に逃げず、現代の男女の愛の物語を書きたいと考えているのだが…という話です。好みの女性が出てきており(やたらと会話に「…」が入る)、主人公はちょっとモーションかけたい(死語)ご様子です。さすがリアリズムの淳一センセイですね!ポシェットが出てくる日も近いです。*1

*1:ちょっと前に淳一センセイが読売新聞で連載していた「幻覚」では、女性はポシェットを持参していました。