えー(驚愕)

テーマを言っちゃったよ。「愛の流刑地」です。

いま、菊治にはたしかな実感がある。

冬香はエクスタシィを迎えたのだ!と菊治は自信たっぷりです。冬香は確かに昇り詰めたのだ、と。今までもよがって喘いでアヘアヘ気味の冬香でしたが今回はいつもと違うのだ!そして菊治がしたことは…

「いった?」

あー、ヤダヤダ。お前は童貞か。
質問のようでいて質問でない問いかけだそうです。しかと見届けたエクスタシーを、互いの喜びとして分かち合うために、この一言は発せられているそうです。

「すごかった…」

これ、菊治の言葉です。いった?のあとにすごかった…とつぶやく菊治ですが、冬香は横たわったまま何も答えません。

だがその答えぬことが、まさしく冬香が、快楽の神に召された証でもある。
「素敵だ…」

冬香が答えぬことなどものともせず、菊治は冬香を抱きしめます。嬉しい!だって冬香がイッちゃったよー。オレもイッた、冬香もイッた、同時に昇天だよ!相手がイクと男も感動するのさ!もう、この年になると自分がイクことなんてどうでもいいんだよ。だって自分がイクなんて、自慰でも商売女相手でもできることじゃん!(何気に菊治差別的発言)そんなことには興味ないよ!

だが女を愛した以上、その女性もともに頂きに昇り詰めて欲しい。それが心底、愛して愛される、至上の愛というものである。

はい、ちゅうもーく。コレ、淳ちゃんの今回の小説のテーマね。「純愛」にはない崇高な性愛にしかない愛情ね。ここ、試験に出るから。よく覚えておくように。
そんなわけで、二人はこのともにイクという頂点に達したんですって。

「よかった?」

崇高な愛を達成した割に何ですか、「よかった?」て。菊治もごちゃごちゃうるさいんじゃ!イッた女性に終わった直後から「いった?」だの「よかった?」だの聞き倒すな!バカか!もうほら、冬香も言ってやってよ、このバカに。「演技に決まってんじゃん」て、クールにね。

「こんなのはじめて…」

初めてかよ!ホントにイッたのかよ!
つづく!
あまりに簡単にこの作品の主題(淳ちゃんの意図するところの)が出てきたのでびっくりしています。一緒にイければ…至上の愛?自分がやりたい気持ちでいっぱいだから毎回風呂にも入らずくんずほぐれつしても、女性が長旅で疲れてるだろう、と思いやるふりをして「休めばいい」=「早くセックスしようぜ」とばかり言ってても、ホテルの延長料金をケチっても、何かと「だから自分から脱げばよかったのだ」とか言って調子こいてても、男性のほうから避妊をしなくても、とにかくセックスして一緒にイければそれが至上の愛か。片腹痛いわ!
今年の衣良さんは「いやらしい小説」をいっぱい書くらしいので(女性誌のエッセイより)、淳ちゃんは今時の楽しいセックスについて衣良さんに教わってきたほうがいいと思います(衣良さんが本当に楽しいセックスを書いているのかどうかは別として。書きそうとかいうイメージの問題)。多分衣良さんは「渡辺先生には渡辺センセイの良さがあると思いますよ」とか言ってこばかにしてくると思いますけどね。だってほら「爽やかな憎まれっ子」だから。