デキる女は「すごおい!」

今年の春はサファリジャケットで決まり!「愛の流刑地」です。
祥子と会うのは去年の夏、冬香と一緒に会った時以来だ。冬香とは親密になったのに、祥子には全く連絡をしていないので少し後ろめたい菊治である。
月曜日の午後が都合がいいとのことなので、2時に会社の近くでもある御茶ノ水に来てもらうことにする。待ち合わせは駅の近くのカフェだ。
祥子はショートカットの髪にサファリジャケットを着、膝丈のブーツを履いて現われた。活発な女性である。
たわいない会話をしていると、祥子が言う。

「そうそう、今度、入江冬香さん、東京に移るのですよ」
「うん」菊治が思わずうなずくと、祥子は「ご存知でしたの?」と聞く。

ちょっと連絡があったものだから、としどろもどろになって答えると、「なんだ、ご存知だったんだ」と言いながら悪戯っぽく睨む祥子。
なおも「メールが来てね」などと言うと「じゃあメル友ですか、すごおい」と大げさに驚く。「私には何もくださらないのね」と拗ねたように祥子は言うので、菊治はアドレスを知らないからとか何とか言うと自分のアドレスを裏に記した名刺を渡してくる。
会話の主導権を握られまくりの菊治。このままでは押されっぱなしなので、少し開き直った気持ちで祥子に聞く。

「冬香さんのご主人はなにをしているの?」
「東西製薬にお勤めで、なかなか優秀らしいわ。だからこんども東京に栄転になって…」
そういうことになるのかと、菊治は無言でコーヒーを飲む。

つづく。
冬香以外の女性が出てくるのは久しぶりなので、「祥子」と書くべきところをついつい「冬香」と打ち込みそうになります。しかしまあ、祥子久々の登場で飛ばしてます。菊治たじたじ。ほんとに菊治ってやつは危機意識というものがないですね。「入江冬香さん、東京に出てくるのですって」「うん」てバカですか。
会話の主導権、そりゃ握られますよ。冬香との会話はポンチ話ばかりですからね。それに御茶ノ水で「あれは順天堂大学病院」「こちらはニコライ堂」とやるわけにもいきません。そんなの祥子知ってますから。久しぶりの東京・御茶ノ水でしたらそうですね…「あそこにあった森永ラブはもうないのだよ」とか「森永ラブのあとはバーガーキングだったのだ」とか「駅の近くのビル1階には中華風ファストフードのお店があったね」とかそんな感じ?*1

*1:私の学生時代の話