こっちが息苦しいわい

見事なる思考停止。「愛の流刑地」です。
(28日)
さらにビールをあおる菊治。落ち着け自分。冬香の夫が冬香の体を探ったとて、何も分かるまい。秘所が濡れ、そして反応したとて、即それが浮気の証拠にはなるまい。
以前胸元などに接吻の跡を残そうとしたことがあったが、その直後だったらどうなっていたことか。くれぐれも気をつけなければ。このままではばれてしまうのも時間の問題だ。バレたらどうしよう。考えるだに息苦しい。

いずれにせよ、不確かな先のことを考えたところで、どうなるわけでもない。

見事な思考停止でございます。
そんなことを考えながら外を眺めていると、冬香からメールが届く。祥子のところで子供たちが出かけている隙にメールをしている、離れれば離れるほどに菊治のことを思い出すらしい。即行メールを打ち返す菊治。

「帰ってくるの、待っている。離れていると不安になってつまらぬことばかり考えてしまうのです。今度逢うときは、あれも終わっているでしょう。待たせた罰にあそこに長い長い接吻を、もう許してといっても許しません」

…だからバレるのも時間の問題だからくれぐれも気をつけようって決心したばっかりじゃん。菊治、もう認知症ですか。でもって、また「あれも終わっているでしょう」て何や。
メールの最後には唇とハートマークをつけて送る。そんな菊治のメールに返信する冬香。

「わたしのいないあいだ、お利巧さんにしていて下さいね。帰ったら、きちんと調べますよ」

何冬香。いきなり「あれも終わっているでしょう」メールに好意的な返信です。変わった方ですね。
そして返事をまた送る菊治。

「君も、きちんとあそこに鍵をかけて、誰にも触れさせないでね」

…犯されたかもしれないとか言ってた女性にそのメールは何だ。バカか。レイプに関するその甘すぎる認識を改めろバカ。
(29日)
冬香が来るまでの3日間は部屋に篭り小説を書き続けた。5月6日には全部で250枚にもなった。この3日間で100枚以上は書いたことになる。あと少しだ。

「村尾章一郎、待望の長編傑作『虚無と熱情』」
「苦しい愛の先にあるものは…あの『恋の墓標』の作家が書き下ろした、久々の恋愛大作」

出版されたときの新聞広告を妄想し、1人胸ときめかす菊治。あらあら、気が早いこと。ほほお、以前の作品は「恋の墓標」ですか。菊治自身が墓場行きですけどね。テクも心も何もかも。

「これで見事にカムバックして、再びベストセラー作家に返り咲き、冬香を離婚させて…」

菊治菊治、妄想膨らみすぎ。ベストセラー作家も無理だろうけど、「冬香を離婚させて…」ってそんな気あったんかい!子供は?子供は置いてこさせるんだろうねえ…「僕は冬香だけを愛している。子供がいたら四六時中あれをできないよ」とか言いかねない。ま、冬香に関しては子供つれてこないほうがいいよ。お父さんの元の方がいいと思うね。冬香別に子供のこと好きじゃないみたいだし。
ま、そんな妄想を膨らませつつ厚い原稿用紙の束を見つめうなずく菊治。そこへ冬香が現れる。
いつものように接吻→ベッド→唇むさぼり→あっという間に体燃え上がり→合体。今日はめちゃめちゃ早いですよ。あっという間に「あったかい…」(菊治)「深あい…」(冬香)です。前戯全くなし。

まさしく、「男と女は、この世で結ばれるために、つくられたのである」。
菊治は昨夜書いた小説の一節を思い出す。

(30日)
冬香とは何度体を合わせても同じだったことがない。冬香の快感は確実に強く、深まっていく。改めて聞いたことはないが、昇り詰める経過と声と震えを見聞きしていれば分かる。
今日は低く長い「殺してぇ…」という声でフィニッシュな冬香。コッ、コワイ…ピロートークはこんな感じで。

「これって、なあに」
(中略)
「よかった?」
「はい」「怖いわ…」
「怖い?」
「どこまで、いくのか…」

あれほど悦びを感じていながらも怖いとは。燃えれば燃えるほど、菊治も奈落の底に引きづられていく不安を覚える。

「大丈夫だよ」「どこまでいったって、大丈夫」
「本当ですか、本当ですね」

冬香、1人ボケ1人突っ込み。

「わたしを、離さないで…」
「もちろん、離さない」
今日の冬香はいつもより昇り詰め、満たされすぎてかえって不安をかきたてられたのか。

つづく。
菊治の妄想も全開、絶好調。さらに玄関から挿入までがかなり短いです。秘所をいじくることもなく、べろチューだけでもう濡れ濡れなのが冬香クオリティ、ということになっているご様子です。菊治、たとい本当にチューで濡れ濡れだとしても、いろいろじらしたりとかすりゃあいいじゃん。じらしもテクのうちだろうに。いくらなんでもチュー→挿入は早すぎだよ。それでよく冬香の夫をテクなしテクなしとののしれるなあ。そして菊治の鬼畜ぶりはいかんなく発揮。先日犯されたかもしれないと涙を見せた女性に対してあそこに鍵をかけろだなんてメールを送る始末です。
いやあ、もうバカらしくてバカらしくて。
1人淳ちゃんが鼻の穴でも膨らませて「性愛とはこれだ、これなのだ!」と書いてるかと思うと、かわいそうで泣けてきます。自分の衰えを知らないとはこんなにも幸せwで悲しいことなのだなあ、と。
日経新聞の編集員は鬼畜ですね。きちんとダメ出しをしないということは、相手をきちんとした作家とみなしていないということですから、日経の人にとって淳ちゃんに原稿を依頼するということは、「仕事の依頼」ではなく「介護活動」なのでしょう。でなきゃちゃんとダメだしくらいするでしょ。しないってことは、淳ちゃんをかわいそうなお年寄りだと思って憐れんでいるということでしょうから。このままずるずると小説は進んでいくのでしょうね…
自分が年をとったらこうならないように、日ごろから周りの言葉にも耳を傾けるような柔軟性を持とうっと…反面教師、反面教師。