そんなわけねえ。

新百合のクリーニング屋はいいクリーニング屋。「愛の流刑地」です。
悦楽の果てには別れの時間がやってくる。別れがなければ二人とも快楽の沼にはまるばかりである。

「起きようか」
菊治の誘いはその沼からの脱出命令である。

danger!danger!そんなイメージですかね。
こないだのシーツを返す冬香。

冬香は自宅近くのクリーニング店にでも出したのか、洗ったばかりのシーツをさしだす。

2日にクリーニングだして、連休3日挟んで、もう6日に出来上がってるなんていいクリーニング屋だなあ。連休もお休みなしなんでしょうか。うちの近所に一軒欲しいです。新百合ヶ丘にはいいクリーニング屋があるんですねえ。…んなバカな!
冬香にきくと、夫は高槻へは行かなかったようだ。ゴルフにでかけてしまったのだという。

優秀なサラリーマンだという彼は、ゴルフ下手な菊治と違って、格段にうまいのかもしれない。

しょっちゅう菊治は冬香夫と自分を比べますね。「も」って他には何が下手なんでしょう。自分のテクが実は下手だということにひそかに気づいているならいいのですが。

「誕生日にどこかへ連れていってくださる、といったこと、覚えていますか」
「もちろん、でも無理なら別の日でもいいんだよ」
「いえ、大丈夫です」

やけにきっぱりと言い切る冬香。

「必ず、連れていってくださいね」
もちろん連れていくつもりだが、本当に一夜を過して大丈夫なのか。
菊治は案じながら、そっとうなずく。

つづく。
冬香の誕生日に何かが起こるんですかね。「どうでも、いいや」なんですけれど。