心霊スポット

冬香の行くところ全て。「愛の流刑地」です。
菊治が「不倫こそ真の愛だ論」を脳内展開していると、冬香が絶頂の死から戻ってきた。

「いま、殺してといった…」

という菊治の言葉にうなずく冬香。菊治は冬香の喉元に拇指*1と人差し指をあてる。「苦しくなかった?」と問うと首を左右に振る冬香。

「あのまま死んでもいいの?」
「いいわ…」

即答の冬香に菊治は指先に少し力をこめる。

「さっき、こうして絞めたけど…」

冬香は逃げるどころかむしろ顎を上げて首を差し出してくる。

「死んだら、終わりだよ」
「あなたと一緒なら、いいわ」
菊治は指を緩めて、納得する。それなら菊治にもわかる。快楽の絶頂で、ともに死ぬのなら不安はない。それを願うのはむしろ自然かもしれない。
「でも、そうしたらこの世には戻れない」

菊治は冬香の夫と子どもを思い、ここまで積み上げたものが無になってしまうと感じる。しかし冬香は「戻りたくない」と言い、重ねて「戻さないで…」と菊治に告げる。「つまらないことは考えないほうがいい」と諭す菊治に冬香は必殺「でも、死ぬほどいいの…」という言葉を投げる。思わず冬香を抱きしめる菊治。それ以外に何ができようか。冬香の感覚が深まったことを悦び、しかしそこから先は考えたくない菊治だった。

「そんなに、いいの?」
「いいわ」
そこまで堂々といいきる冬香が、菊治には怖い。

つづく。
コワー。ホラーテイストきました。
それにしてもちょっと前までチチをもまれたくらいで「誰かに見られますよ」と言ったり、明るいところでするのはイヤンと体をよじったりしていた人の言葉とは思えません。冬香恐るべし。
ガクガクブルブル。
冬香のことは芦ノ湖に沈めたほうがよくないか?…でもそんなことしたら化けて出そうだあな、冬香は。

*1:拇だけで「おやゆび」と読むのですが、淳ちゃん表記では「おやゆびゆび」と書くようでございます。