選ばれし者たち

どへー。臭みありすぎる。「愛の流刑地」です。
冬香は主婦たちの中でも孤立しているのかもしれない。冬香が自分から言わなければ外見上は分からないだろうが、冬香は心も身体も別の世界に生きている。
菊治も同じで、本当の意味で愛について語り合う男友達はいないのだ。

結局、この世には自分と冬香しかいない。

孤立感はあるが、それがまた互いへの思いをかりたてる。

まぎれもなく、自分たちは深く愛し合い、結果として、圧倒的な性の歓びの体験者であり、その意味で、まさしく性のエリートである。

ぽかーん。

ドロドロの恋愛などイヤだ、一生を台無しにするのはイヤだと言いながら不完全燃焼の人生を送っている他人と同じようになるのは真っ平ごめんである。

この世に生まれてきた以上、一度はいま、この一刻のように燃え狂いたい。
「なにも知らない奴なぞ、放っておけ…」
少し投げやりな気持で、そのまま冬香を、息が詰まるほど抱き締める。

あは、あははは、アウトローな感じでドロップアウト気取りですね。きゃー、かっこいいー(棒読み)。
ところが起きて帰り支度をする時間が迫っている。

むろん起きたくないが、これだけ愛をたしかめあったら、むしろ安心して離れることができる。

あひゃ?愛しすぎて離れられなくなって、人生を台無しにしてもいい!と自分たちに酔っていたわりには冷静ですね。安心して離れちゃうのです。菊治と冬香に一本とおった筋などありません。あるのは稚拙なセックス、それこそがキモです。No future!だけど保身に走るぜ!
バスルームでちょいちょいと身支度を整えた冬香に、菊治は原稿を渡します。「暇があったら読んで欲しい」

「このFって…」
「もちろん君だよ」
「嬉しい…」

冬香は原稿を胸に抱えたまま、菊治に身体ごとダイブだ!
つづく!
性のエリート!
不完全燃焼の人生にサヨナラ!
ひー、腹が痛いー。よじれるー!
何だよ、齢55にして初めてでぃーぷすろーとされて感激してたおじさんに言われたくないよ!
いやあ、この2人、本当にお似合いのカップルですね。ちょっと話すだけの子供の学校関係の知り合いに優越感バリバリの性のエリート・冬香と、単に友達がいないだけなのに自分が孤高すぎて同じレベルの友達がいないと勘違いしている同じく性のエリート・菊治。ああ、何てお似合いなんだ。すばらしい。割れ鍋に綴じ蓋?よかったね、なかなかそこまで同じ感覚の相手には出会えないよ、運命の2人だね、うんうん。いやあおめでとう。サヨナラ、この世のしがらみよ!コンニチハ、別の世界!