凛とした感じで

自らの奴隷宣言を台無しに。「愛の流刑地」です。
すっきりしたところでようやく元気を取り戻す菊治。冬香の言うとおり、いつか認められ脚光を浴びるかもしれない、と思えるようになる。こんなことでくじけてはいられない。あいつらを見返してやる、という気持ちでなければ。
ありがとう、と改めて冬香に礼を言う菊治。冬香のおかげで立ち直れたのだから、当然である。

「いつか、必ず本にする」
「そうよ、わたしのために『Fへ捧げる…』って書いてくださったんだから」

偉そうだな、冬香よ。抱き寄せて接吻コースへ進む二人。いつもより長く愛し合ったためか残り時間はもうわずか。冬香はバスルームで来た時と同じ白いノースリーブのワンピースに着替える。菊治は出て来た冬香の腋の辺りにそっと手を触れる。なんて艶めいた上腕なのだろう。
花火の日に出てこられるのかどうか確かめる菊治。冬香は浴衣で、どんなことがあっても出て狂う来ると決意を新たにしている。

「で、泊れるんだね」
「はい、泊ります」

花火の夜に泊ってちょめちょめして…と夢を膨らましている菊治。ああ、実現するならまさに「真夏の夜の夢」のようだ。

「思いきり、奪ってやる」
花火の夜を詠んだ中城ふみ子の歌を思い出して言うと、冬香がきっぱりとうなずく。
「わたしの全部を、奪ってください」

つづく。
ニュープレイの誕生ですか(棒読み)。どうせ本当に奪う気も奪われる気もないくせに。次の逢瀬用の言葉遊びですね。私の全てを奪って、ってところできっぱりしてどうするんだ冬香。ホントにきっぱりするところを間違っとるよ。そこちゃうよ。