そろそろですか

お盆明けに向け、淳ちゃんからのこってりプレゼント?「愛の流刑地」です。
(13日)
菊治の住む千駄ヶ谷から神宮外苑までは歩いて10分程度である。
花火の音を追いながら外苑へ向かうが、人出が多くビルがあって花火も見えない。仕方なく鳩森神社へ戻り境内から眺めるが、木々に邪魔されて半分ほどしか見えない。
やはりマンションの屋上から眺めることにする。居住者たちと顔を合わせることになるが仕方ない。屋上に着くとすでに10人以上の人々がいる。管理人は2人をみてうなずいた。いつも来ている女性が浴衣を着ているのだと分かったようである。
会釈をし、「ここの方が見えますね」と菊治は管理人に声をかけたが「手すりが汚れていますから気をつけて」と返事される。ああかみ合わない会話。

「すごおい…」

目の前で炸裂する花火を見てそう形容する冬香。たしかにきれいと言うより凄いというのが合っているかも、などと思う菊治。
(14日)
花火を見に出かけるのは何年ぶりだろうか。華やかに夜空を彩りたちまち消えるその儚さを売りにしているところがいかにも思わせぶりでなじめなかった。
だが、十年ぶりに見る花火はそうしたイメージとは異なり、華やかで力強く、ロケットのようである。情緒と言うより科学の粋を集めた華麗なショーと言った感じだ。
菊治はふと花火の下で接吻をしたくなり、冬香の手を引いて壁の先の陰で唇を寄せる。ひそかに接吻を交わしていると、再び花火が上がりだす。

花火が臆面もなく接吻をする2人に嫉妬したのか。

いいえちがいます。

「凄い、音が内臓に響く」
「子宮に響きます」

またアンタはシモの話か。
(15日)

子宮に響くとは面白い表現である。

表現者として心の中で褒める菊治。

たしかに、花火の華麗な光と鈍く打ち上げる音は、女性の性的感興を呼び覚ますのかもしれない。
「ここに…」と、菊治は冬香の浴衣の前に手を近づけ、「ひびくの?」と股間に軽く当ててみる。

うへー。シモだ。シモの話だ。
そんな感覚にとらわれるのは性的に成熟した女だけだろう。…つーか、アンタだけです。冬香まだそこまで言うてへんて。
バンドのドラムの音で興奮する女性がいたよ、と昔の女の話をする菊治。
冬香の子宮の奥はいまも騒いでいるのだろうかと思うとたまらない。どう乱れさせようか、考えるだけで自分、熱くなる。
花火はまだ続くようだが、30分も見ていると飽きてきた。
「そろそろ行こうか?」と冬香に声をかけるが、こんなにはっきり花火を見たのは初めてです、という冬香はそれを引き止める。

「今日のこと、絶対、忘れません」

きくじはふゆかのはじめてをてにいれた!はつたいけんが2ふえた!
つづく。
冬香は「すごおい」で全てを表現。ある意味すごおい!