何の時間稼ぎだ

ほんと、どうすんのかなあ。「愛の流刑地」です。
冬香にすがりついて泣き続ける。長いようで短い時間。もう冬香は甦らないと知り、脳裏に『殺人』という言葉が浮かぶ。
「俺が殺人者…」とつぶやいてみるものの、他人ごとのようにしか感じられない。
だが動かぬ冬香を見ていると、それが事実であるということが染み入ってくる。とてつもないことをしてしまった、早く救急車を呼ばなければ。携帯電話を手にするが、今病院に運び込まれて助かるものだろうか。いまから心臓マッサージなんかして効果があるだろうか。そんなことばかり頭に浮かぶ。
しまった、もっと早く救急車を呼べばよかった。何をのろのろしていたんだ、俺、と自分をしかりつけるものの、怠けていたわけではない、とも思う菊治。

はっきりいって、冬香が動かなくなっても、死んだとは思っていなかった。セックスのあまりのよさに、一瞬、気を失っていただけだと、たかをくくっていた。おかげで、貴重な時間を失ってしまった。
とにかく、本当に手遅れなのか。

…アンタ、それをそのまま警察にも話すわけ?…菊治ならやりかねんな…
それはそうと、脈を診たり心音を探ったりするが何も反応はない。怖くなり冬香の顔を見ると、唇から血の気が引き、青ざめている。
もう、戻らないのか…とつぶやき、それでも何をしたらいいのかわからず、全裸で横たわる冬香に浴衣をかけて「やる」。
つづく。
こりゃもうアカンわ。これで甦ったらホラーやねっ。あ、性のエリート様たちの話やから、真実の愛によって甦るんですかね。そりゃ、今までの純愛ブームにはなかった展開やね。愛があっても甦ってはないからなあ。