ほじほじ

篠田監督の私の履歴書が終わってしまったよ…しょぼん。「愛の流刑地」です。
いまはまさしく深夜だが、こんなに静かだろうかと思うほどに静まり返っている。深夜の静寂の中で、冬香の青白い顔を見ながら考える菊治。

このままいつまでも、冬香を部屋に置いておくわけにはいかない。死んでいるのか生きているのか。ともかく、いましなければならないことは、119番に電話して、この異常事態を報らせることである。それが一緒にいた者の務めである。

菊治、いささかオカシクなっています。残念なのは、日ごろからかなりオカシイので、これが殺人または冬香を失ったショックでオカシクなったというふうに読者としては受け止められないことです。この期に及んでまだそんな他人事か!という気がしてしまうのです。
さて、菊治です。救急隊を呼ばなければと思いつつも、彼らがやってきたら冬香を連れて行ってしまう、処置が間に合えば病院に収容されるし、死んでいれば自宅に戻されるし、どちらにせよもう二度と冬香には逢えなくなってしまう。菊治は「いやだ…」とつぶやき、冬香の胸元に顔をうずめ、

「いやだ、お前と別れたくない。ふゆかは誰にも渡さない」
どうなっても、冬香は自分のものである。

冬香も「私はあなたのものよ」と言っていたのだし、いまさら離れ離れになんてなれるものか。誰がなんと言おうと、冬香とは離れない。
そんな駄々っ子菊治の脳裏に、2人で行った死体の上がらない湖・芦ノ湖が思い浮かぶ。
セックスの絶頂で二人一緒にイク瞬間、このまま2人一緒に死んでもいいとおもったこともあったのに、いまとなっては自分ひとり生き残っている。自分だけ生き残ってどうするのだ、俺。

それでは殺人者というレッテルを張られて、みなの怒りと嘲りをかうだけである。

えー、業務連絡。嘲りは受けるものであって、かうものではありません。怒りはかいますけど、嘲りはかいません。ついでに、菊治はすでに嘲りを受けまくっていますので(読者から)今更そんなこと気にしないでください。業務連絡終わり。
菊治はふらふらと台所(本文では『キッチン』)へ向かい、わけがわからなくなりながら戸棚のナイフを取り出し、右手に握る。
つづく。
なーんかだれてきたなー。今更ナイフを菊治が持ったところで、なんとも思わないから。とっとと先に進んでくださいよ。