使いまわし

劣悪。「愛の流刑地」です。
ふと思い出し、菊治は枕の下を探る。箱根の夜にしこんだレコーダーを、今日も仕込んでいたのだ。マットの下にもぐりこんでいたそれを探し出し、再生する。
「きれいだ…」と高ぶった自分の声がする。「ください」と冬香が求め、「滅茶苦茶にして」と激しく悶える。そう、騎乗位で下から菊治が打ち上げ花火の件である。
しばらく沈黙が続き、また燃えている。「殺して」「死ぬぅ」で首を絞め、咳き込む音。「大丈夫」と心配する菊治に、死にたかったのに、あなたに殺されたいと訴えて夫に求められたことを告白してキョムネツべた褒め。
長い沈黙の空白のあと、あなたとつながっていたいの、で三度燃え燃え。

「首を絞めて」「ねぇ、もっと…」「殺してぇ」「死ぬぅ」という叫びと共に「ごわっ…」という音が響き、次の瞬間、ぴたりと音がやむ。
間違いなく、レコーダーに全てが残されている。ここまで聴けば、冬香の死が、冬香と菊治の圧倒的な愛による、2人の合作であることは明白である。

バカじゃねえの。
つづく。

……
………119にも警察にも電話しないで達した結論がこれか。
警察にこれを聞かせたのち「だから首を絞めたんですよ…(遠い目…)」とかするつもり満々ですね。ひとりくらい共感するバカな警察官がいたりして、「他の者は笑うかもしれませんが、ぼくにはわかります…(ダブル遠い目…)」とかいう新たな性のエリートが誕生しないことを切に祈ります。