バカむすこ

ざっと読み。本当は「バカッ父」なんですけれども。「愛の流刑地」です。
(10日)
ペンダントを手に取り、これを思い出の品としてとっておきたい。「いいね、これだけは離さないから」と傍らの屍に語りかけるがもちろん返事はない。だがこの思い出を菊治が持っておくことに、冬香も喜んでくれているに違いない。
さて通報なわけだがその前に、警察に連行されたらしばらくは戻って来れないと身の回りの整理を始める菊治。会社にも急用で出られないと伝えておかなければ、拘留中は着替えを取りに戻れないだろうからとりあえず夏服の着替えでも持っていこう等、やらねばならぬことは山積みだ。そんな忙しいさなかの午前9時すぎ、家の電話が鳴る。何か家の中が見られているような気がして受話器を取るのが怖い。そうしていると、今度は携帯に着信が入る。見ると息子の高士である。映画配給会社に勤め、今はひとり暮らしをしており滅多に会うことはない。
「実は俺、今度、結婚しようかと思って…」出頭することだけを考えていた菊治はすっかり気が抜けてしまう。
(11日)
めでたいが、正直今の菊治にそんな話を聞いている暇なぞない。高士は一度彼女に会ってほしいという。ほんのちょっとの時間でいいとも言っている。相手は25歳で高士と同い年で取引先に勤めているなどの情報を開示してきた。会いたいのはやまやまだが、今の菊治はそれどころではない。なんといっても菊治は殺人者なのである。離婚のときにどちらの籍にするか聞いたことがあったが、高士はその際に妻の戸籍に入ると言っていた。今となってはそうしておいてよかったといえる。
早く電話を切りたくて、菊治は「母さんがいいと言ったのなら、それでいい」と告げると、息子からは「ずいぶん無責任だな。俺の嫁さんなんか、どうでもいいって、わけ?」と言われてしまう。もう会う日程等を決めたそうな高士をおきざりに、軽くお祝いの言葉を述べて菊治はとにかく電話を切った。
(12日)
高士には悪いことをした、と今更ながら謝りたくなる。
殺人のことが分かったら、元妻はどう思うのだろう。菊治は離婚前から自分の好きなようにやっていたのであるが、さすがに今回の交際中の女性を絞め殺すだなんてことは考えてもみなかったとは思うけれど。本当に、妻にとっては自分と別れていてよかった、と胸をなでおろすのではないだろうか。
これから高い塀の中で暮らすことを考えると、突然そら恐ろしくなってくる。中へ入ってしまったら、二度と新鮮な空気もすえないだろう。この際だからと外の空気を吸いにでかけることにする。ふらりとコンビニへ行くくらいの軽装(ズボンにシャツ)でエレベータに乗り込み、誰にも会わずに表に出ることが出来た。
つづく。
高士…間が悪いことこの上ない…高士の会社はなかなか優雅ですね。朝の9時に電話で自分の結婚話をつらつら語る男は仕事が出来なそうです。フレックス制度の会社ならこのかぎりではありませんが・・・
それにしても菊治が離婚したのってついこないだだけど、高士25歳、分籍*1しようとは思わなかったんだね。結婚も近いのだし、わざわざ母親の戸籍に入るより分籍しちゃえばよかったのに。
でもって冬香を置いて出てっちゃったよ!冷房はつけっぱか?真夏の暑さをバカにすんなよ。まったく、これからえらいことになるであろう…(誰でも出来る大予言)

*1:親の戸籍に入っている子どもが、親の戸籍から抜けて新しく戸籍を作ること。成人であれば誰でもできる。