ぷにぷに

反対語はガチガチでしょうか。「愛の流刑地」です。
(14日)
ふらふら出かけてふらふら帰ってくる菊治。入り口付近で管理人に挨拶されとまどう。
あいかわらず横たわったままの冬香。死体ですから。「淋しかった?」と声をかけるが答えはない。死体ですから。「俺だけの知ってる場所に隠して俺が守りたい」とかそんなようなことを言う。
ふと見ると、絞めたはずのないところにまであざが出来ている。窓から光を入れ浴衣をはぐって全身を見ると、ベッドに接する面はあざのような斑点だらけである。動かしてみるが体は硬くうまく動かせない。こんな体は冬香じゃない…菊治の脳裏に「死後硬直」という言葉が浮かぶ。
(15日)
週刊誌の仕事で「死後硬直」という言葉を見たことがある。
今まではただ優しかった冬香を失ってしまった、としか認識していなかったが、白く美しい肌には死斑が浮かび、柔らかかった体は硬く強張っている。ここだけは、と思った白く柔らかい乳房も今ではしこりのように硬い。こんなの冬香じゃない。
「ねぇ、子どもたちのところへ戻る?」というようなことを話しかけつつ、菊治はようやく通報しなきゃかな、と思い始める。
つづく。
ええっと、この話は人妻型ロボットと売れない小説家が自称「性のエリート」として互いをむさぼりあう肉欲の世界を「愛」と言う名のオブラートに包んだらぐずぐずになっちゃった!というお話ですから、もう死んじゃった相手に対しては愛など溶けてなくなっている(もともとなかったともいう)ため、「子どもたちのところへ帰る?」とかいう言葉が出るのは当然でしょうねぇ。菊治の本音は「ああもうめんどくさ。斑点でてるし硬いし、もうやっかいだから帰しちゃえ。本人帰りたくないとか言ってたけど別に死んでるしいいか。埋めて自分が守るとか言っちゃったけど、死んでるから聞いてないってことで」なんだろうなあ。
独房に放り込んでおけ。