弁護士登場

今頃きたんか。「愛の流刑地」です。
(1日〜3日)
冬香が夢に現れる。長く苦しい夜も冬香となら平気だ。いつも冬香はさびしげに菊治を見つめるばかりなので、菊治は一方的に話しかける。
ワープロ刑事は優秀らしいが男女の愛が分からぬ男である、死ぬほどセックスが快かったらそのまま死にたくなることもある、なのにあの男は女がそんな風になるわけはないと言い張る、あいつはエクスタシーを女に与えたことがないに違いない、でも冬香はホントのことを知ってるよね、ああ、君があいつにそう話してくれるといいんだけど…と死んでしまった愛する人に出会えたとは思えないような話ばかりする菊治。
あのレコーダーを聞けば菊治の言葉にうそがないことは分かるのだろうが、部屋の机の引き出しの奥にしまいこんだままである。あれだけはけして誰にも聞かせないからね、愛の証をあんな奴らに聞かせたりはしないから…
翌日、弁護士と面会した。知り合いに弁護士は居ないので、国選弁護人である。その弁護士は北岡と名乗った。菊治より若いが50歳くらいで、ワープロ刑事よりは男女の機微が分かりそうな男だ。菊治が凶悪犯でないせいか、困ったことや相談したいことがあれば連絡をください、と北岡はあくまでも紳士的である。さっそく2,3枚の着替えと預金通帳・実印の保管を頼む。
事件のことは報じられたのかと菊治が尋ねると、事件の翌日には新聞で写真入り3段で報じられたという。有名作家だからかなり大きく出たと聞き、小説を持ち込んだら過去の作家と言ってたくせに事件が起きると有名扱いだなんて!と憤りを感じる菊治。
それにしてもワイドショーでも取り上げられたというから、どんな騒ぎなのか想像するだけでも気が狂いそうだ。

「かつてのベストセラー作家、女に狂って殺害」
「不倫の果てに死の清算
「三人の子供の居る人妻を殺して、当人は自首」

アンカーマンをしていたせいでセンセーショナルな見出しが浮かぶという菊治。・・・センスがない見出しだなあ。読者呆然。
元妻や息子高士、大学の講師仲間や中瀬、それに祥子や冬香の夫、子供たちはどうしているのか。考えれば考えるほど絶望的になる。
壁にどんどんと頭を打ちつけて暴れるが、看守にやかましいと叱られる。どうしたのか、と聞かれても答えようがないし、言ってみても仕方ない。
それにしても一番気になるのは息子高士のことである。結婚話は一体どうなったのだろうか。結婚相手の両親は大反対なんじゃないだろうか、いやいや、当の結婚相手が殺人者の息子と結婚したがるものだろうか。
高士、許してくれ…と頭を抱える。

ただ愛するあまり、首を絞めただけである。それがこれほど多くの人を巻き込み、苦しめ、哀しませるとは。

今頃気づく菊治。気づくというか…ほんとの意味では気づいてないなあ。ただ首を絞めたて、どういう言い草や。SMのプロに謝れ!この素人が!
これでは現実に戻ってもどうにもならない。

もう生きていけない。
「いっそ死んだ方がいいのかも…」

脳裏に「死」がうかぶ。
つづく。
あんまり絶望が感じられないんですけど…だって死んだ方がいいの“かも…”だもんなあ。ただ首絞めただけなのにーってバカじゃなかろうか。弁護士つけたりボイレコは押収されてなかったり、あまりにもずさんだ。とってつけだ。そしてワープロ刑事は仕事上でも優秀さが微塵も感じられませんよ。菊治には優秀に見えるんでしょうけど…
さて、この北岡弁護士は性のエリートなんですかね。また最初は紳士的でもそのうち「ウソはいけませんよ。女性が絶頂で死にたくなるなんて」とか言われて菊治は心を閉ざしてしまうんですかね。