淳ちゃん流リアリズム

キタ―――!東野圭吾直木賞に選ばなかった理由が、小説内にて使われたですばい!「愛の流刑地」です。
なぜか新章スタート。『夜長』です。なんで?もう終わるんちゃうん!
(29日〜31日)
八月末、菊治は小菅の拘置所に移された。当日はワープロ(脇田)刑事に「体には気をつけて」と声をかけられる。菊治は脇田に対して不快感は持っていない。基本的には紳士的な態度で接してくれていたからだ。
護送車から街を眺めると、残暑は厳しいようだが雲の位置が今までよりも高くなったように感じる。街行く女性をみると、胸元の開いたノースリーブを着て歩いている者もいる。
「白い…」肌を露出させている女性を見ていると、信号が変わり「腰を軽くくねらせて歩きだす」のが見えた。菊治は欲望が芽生え、自分が男だったことを思い出す。
小菅は近代的なビルだった。持ち物検査などを経て看守に両脇を固められ個室に連れられる。4畳くらいの広さだ。
どれくらいの間ここにいるのかと考えると暗澹たる気持ちになる。看守たちは日常生活についての注意事項が書かれた紙片を置いて出て行った。起床7時、朝食7時半、昼食は11時50分、夕食は午後4時20分、そして就寝は9時だ。
窓も天窓もない部屋である。ただ厚い壁に囲まれて、菊治は息苦しさを覚えてしゃがみこむ。
「冬香、こんなところに入れられちゃったよ」
窓も天窓もないので冬香が舞い降りてくれるか心配だ。
翌日の午後、北岡弁護士が来てくれた。眠れたかと聞かれるが、菊治は首を横にふる。あまり眠れなかったし、閉所恐怖症のような症状にさいなまれたのだ。
「冷暖房完備だから再犯者には是非ここを、と希望する者もいるのですよ」と北岡弁護士は冗談交じりに言ってくれるが、菊治は笑えない。
あらゆる行動が監視され、日常全てが規則どおりに定められていることが耐え難い。
裁判は1ヶ月後くらいに始まるという。さっさと裁きを受けてすっきりしたい菊治だが、そうもいかないようだ。
何か欲しいものはないかと聞かれ、鉛筆と消しゴムと書斎にある辞書を頼む菊治。日記でも書けば気もまぎれるのではないかと考える。
つづく。
直木賞云々の話は、東野圭吾「手紙」が直木賞候補になったとき、淳ちゃんが「獄中の人間が外の人に手紙を書くときに『女とヤリたい』と一度も書かないなんておかしい。私のファンの受刑者は必ず書いてくる。だからリアリティに欠ける」と反対した件です。
それにしても延長させてまで何を訴えたいのかまるでわかりません。拘置所内での被疑者の人権を守れ!窓ぐらいつけろ!もっと自由に生活させろ!とでも言いたいんでしょうか。
「冬香、こんなところに入れられちゃったよ」ってあんたが冬香を殺すからだろーが!天窓がなかろうがどうせ冬香は出てくんでしょ。あいつどこまでいっても都合のいい女だからさ。