…それが、愛なのか

なのかなのかなのか。「愛の流刑地」です。
(3日〜7日分)
菊治は自慰で心の安らぎを得た。
刑務所拘置所内はいろいろと行動を制限されるとて、この寝る前の自慰までも邪魔されるいわれはない。ある意味反逆の証なのだ。
冬香はそのたびに光臨して積極的に菊治を手伝ってくれる。キモいなんて冬香は言わない。冬香もハッスルして菊治とともに行き果てる。
菊治の刑務所内での自慰以外の楽しみは、入浴と運動時間である。運動の時間は庭に出られ、高い空を仰ぎ見ることができる。真昼間から冬香と2人でかけることはもうできないのだと思うこともある。
北岡弁護士が接見に訪れ、裁判の期日を知らせてくれる。10月10日だそうだ。担当検事はあの美人検事・織部美雪さんである。
彼女が自分を訴え、告発する相手になるのか。
女性検事というのはどうなのですか、と弁護士に問うと、本人に会っていないのでよく分からないが、女性検事は大概細かくて鋭いので大変だと言う。女性なら愛や女の気持ちを分かってくれると思っていた自分は甘かったのだろうかと菊治は思う。
ボイスレコーダのことを弁護士に告げると、おそらく家宅捜索で持ち去られており、今は検事の手元にあるのではないか、とのことだった。
菊治は男女の睦言を聞いている織部検事の顔を想像する。
あのレコーダを聞けば、冬香が「殺して…」と言ったことが分かるので、菊治が不利になることはないだろう。ただ、あれを他人には聞かせたくない。何とかしなければ。だが菊治はただ待つだけである。
中瀬が男を伴って現れた。「虚無と熱情」が刷り上ったのだという。仕切りの向こうで中瀬が見せてくれた本の表紙には抱擁する男女。表紙をめくるとそこには菊治の字で「愛するFに捧げる」と書かれていた。
初版で10万部だそうだ。中瀬が伴ってきた男は出版部長だそうだ。原稿の持ち込み段階で出版を断ったことを詫びる出版部長。
広告も見せてくれる。「死を賭けて女を愛した作家の、畢生の大作」*1と書かれていた。
つづく。
死を賭けたのは冬香であって菊治じゃないんじゃ…
何だかもう愛がどんどん安く下品になっていってどないもこないもならしません。
織部さんをオカズにする日も近いぞ冬香。

*1:こまいところが間違ってるかもしれません