はン。

ご乱心!ご乱心!「愛の流刑地」です。
(19日)

拘置所の独房に戻されても、菊治の気持はおさまらない。

人前で大変な醜態を演じてしまったという後悔と、自分のいいたいことをわかってもらえたはずという思いが交互に浮かんでくる。

それにしても、彼等のいっていることは違う。

検事は性的関係の状態では真意に基づく依頼ではないと決めつけ、裁判官は性交中の依頼を真に受けて絞殺しちゃうのは異常で許されない行為であることくらい予測できんだろ、と断じた。それは違う。

「どこが?」ときかれると、うまく説明できないが、とにかく違う。あの法律しか知らない、秀才面の奴等にわかるわけはないが、実際その場にいて、冬香とセックスしていた自分はたしかにわかる。


……
ハァ?
真意とか社会道徳とか関係ねえ。冬香が理想の死を求めて叫んでいたのだ。自分はそれを信じた。かなえてやりたかったのだ。

要するに、自分は冬香にせがまれ、求めるままに手を下した、一介の下僕である。
それを殺人犯と決めつけ、このまま八年間も閉じこめるとは。

刑期などどうでもいいが、自分は幼稚非常識短絡的行動などとっていない。奴等は理屈や理論しかわからないのだ。それから外れたものは全て偽りだと決めつけるのだ。

でも人間は情で動くのだ。情念を侮り、否定した、そのときから人間は人間でなくなってしまう。

相変わらず護送車の窓から…

ん?いつのまにやら護送車にまた乗っている菊治です。そんな二度乗りの護送車の中でも検事と裁判官を罵り続けようやくまた拘置所に到着…ってんなわけあるかい!!今日の冒頭で拘置所戻っとったんちゃうんかい!
気が納まらない菊治は独房の壁を叩いては「違う」と言っていたら看守に怒鳴られ、へたへたと座り込んで頭抱えて「違う…」とつぶやいたそうな。
つづく。
菊治は(淳ちゃんは)セックスとエロしかわからないのだ。それから外れたものは全て偽りの愛だと決めつけるのだ。でも人間はセックスだけで生きているのではないのだ。
とまあ安っちく模倣してみました。
結局菊治もわかってないので、読者にそれが伝わるわけもなく、菊治の主張はただ単に「8年もムショ暮らしなんてイヤだ。だって冬香が殺れって言ったから殺ってあげただけだもん。冬香を想ってやってあげたんだもん。殺人罪だなんておかしいんだもん」と言ってるだけにしか聞こえないんですけど…。
冬香を愛するあまりその願いを叶えてやりたくてやった、とセリフと地の文にはよく出てきますけど、全然そういう思いをこめた描写がないので菊治のふかあい愛が全然読み取れません。ふかあい愛でもって絞めてあげたこのオレ様が、刑務所になんて8年も入ってられっか!早く印税使わせろや!みたいな感じ?
ま、どう違うのか、主人公本人がわかってなかったとしても、描写でそれを説明できるのが作家の力量と存じますが、いかがですかしら。