奪ってない、奪ってない。

 わざと?ねえわざと?「愛の流刑地」です。
 週末から今日までの分をまとめてお送りします。
(土曜日)
 冬香が夫とうまくいってるのかどうかが気になる菊治。やわらかな白い肌も唇も秘所も夫に触れられ、自由にされ、挙句3人もの子供を産んでしまったのだろうか。菊治はふと「一盗二婢三妾」という言葉を思い出し、冬香の夫に羨ましさを感じる自分を諌めます。自分はこの第一位であるところの人妻を奪ったのであるから、充分満足すべきだと。一回ヤったくらいで「奪った」とは片腹痛いですが、先へ進みましょう。

とにかく、いま恋は始まったばかりである。

 そうですか。恋がはじまりましたか。おじさんたちよく言いますもんね。「I(愛)の前にH(エッチ)がある」…はあ…これが純愛ブームに釘をさす恋愛小説の中身ですか。ペのステキさがイマイチ理解できない私ですが、思わず「ぺさまー!」と福島空港に走りたくなってきました。いけません、おじいちゃんがいっしょうけんめい書いている恋愛小説です。先へ進みましょう。
 菊治が物思いにふけっていると、冬香がバスルームから出てきました。
(日曜日)
 冬香に「まだ休んでいますか?」と聞かれ仕方なく起き上がる菊治。きちんと服に着替えている冬香を見てちょっと別れがたく思います。
「見てごらん、雨に洗われて京都の街がきれいだ」
「こんな街を、君とゆっくり歩きたい」
「帰したくない」
 窓際で口説き文句ぽいことを口にする菊治。菊治が口にすると全てヤルためだけにしか聞こえないところが空虚です。そんな菊治への冬香の答えはやはり「ごめんなさい」です。それを見て菊治は「これ以上、責めると、冬香は崩れてしまうかもしれない」と思い、引き止めるのをやめます。

「また逢ってくれる?」
「はい…」
「じゃあ、また来る」
「本当に、来てくださるのですか」
「もちろん」
 恥ずかしげに髪をかきあげる冬香に、菊治は別れの接吻をする。

(月曜日)
 窓際で接吻していると、フロントから電話が。
「延長なさいますか?」
 チェックアウトの時間は11時なので、すでに1時間ほど経過しています。冬香も帰ることだし、5,6分で帰り支度はできるしと考え菊治はチェックアウトすることにします。その時菊治はこう考えることも忘れません。

それに今なら延長料金は払わなくてすむかも知れない。

延長料金くらい払えよ。ったく、みみっちいったらねえや。
 …失礼しました。
 菊治はバスルームで顔だけ拭いて出てきます。二人そろって部屋を出、菊治は冬香の尻を触ることを忘れません。
 ロビーで別れる二人。菊治は冬香の後姿を眺めます。

 うしろ姿はすらりとしているが、足の運びが軽く内股に見える。
 瞬間、菊治は風の盆を踊る姿を思いだし、そして熱く、ひたと締めつけてきた秘所の心地よさを思いだす。

つづく。
 えー。菊治すっかりカレシ気取りです。菊治にはこの言葉を捧げましょう。
 「1回ヤったくらいであなたのものになったなんて思わないで!」(冬香最大限の自己主張な感じで)