指揮者きどり

ふんふん!「愛の流刑地」です。
果てて気だるい菊治。自説のご披露です。
セックスとは音楽のようなもの。とりわけピアノコンチェルトのようであると。男はオーケストラ、女はピアノ。ラマニノフのピアノコンチェルトの3番、第三楽章である。甲高いトランペットの音色で頂点に達し、ティンパニーで快楽の淵へ。

いま2人は、その最後のクライマックスに昇り詰め、夢とも現実とも分からぬ世界を漂っている。
ちょうど、拍手と喝采が鳴り止まぬ会場で、やりとげた充実感で満面に笑みを浮かべている指揮者とピアニストのように、ベッドの上でしかと寄り添っている。

11時を過ぎているがまだ少し余裕がある、と菊治は冬香を抱き寄せます。すると冬香は突然「ごめんなさい…」と謝ります。なぜに?と思っていると重ねて冬香は「恥ずかしくて…」それを聞いた菊治は、またたまらなく愛しくなり、ぎゅっと抱きしめるのでありました。
つづく。
…謝れ!拍手と喝采が鳴り止まないような演奏をする本物のオーケストラと指揮者に謝れ!という気分になる本日でありました。冬香はもう寸分の隙もなく、菊治にストライクですね。松木安太郎の「あいつにマンマーク」も真っ青です。