で、延長料金は?

会話力とは文脈力(斎藤孝)。「愛の流刑地」です。
(14日)
前回の逢引とは違い、今回はいろいろ話したのでロビーまで見送ることはせず、目と目で合図して別れる。延長料金については言及しないが、今回は前回とは違い「のぞみ」で東京へと帰る。車窓から去り行く京都の街並を眺めながら、今回もどこにも行かなかった…ということに思いをはせる。まあ菊治のことなので「どこにも行かなかったなあ」と思うだけで、デートらしいデートをしてないことには思い至りません。それどころか、冬香が一晩上京してくると言ったことに意識は集中。これまでの慌ただしい逢瀬とは違い、優雅なデートになるだろう、さてどこに泊まろうか。…ちょっと待て。普通「優雅なデートになるだろう、さて、どこに行こうか」じゃないか?いきなり夜の計画ですか!いやいや、今回の菊治はつっかかりどころがこれだけじゃないので、先へ進みます。「ホテルをとるのもいいが、ウチのマンションに来てもらって私のすんでるところをみてもらうのもいいだろう」

なにせ、お金がかかるのだ。

すみません、原文をそのまま写してないのですが、こういうことを婉曲にではなくがっつりそのまんま地の文に書いてあります。このあと、京都に来るのに往復の新幹線代とホテル代で7万円かかってるだの、前回とあわせると15万ちょいかかってるだの、毎月4〜50万円で賃貸マンションの家賃も払ってるから結構大変だの、貯蓄が800万あってそれを切り崩して使ってるだの、ブイブイ言わせてる頃に買ったマンションは別居中の妻にやってしまっただの、貧乏くさいことを並べ立てています。一人身の貯金が800万では心もとないが、それすら切り崩して使うほどに、冬香のことを愛しているという菊治。これが人生最後の恋だ、などときざなことを言うつもりはないが、それくらいの熱い思いを抱いているのだ。
(15日)
新章スタート!サブタイトルは「蓬莱」です。
年の瀬とはいっても、別居中の妻に会うでもない菊治には特にやることもない。別居中の妻のところにいる1人息子(名前年齢等、不明)が1日顔を見せに来るくらいである。
「お袋は、この休みには友達と沖縄に行くらしいよ」(息子唯一の台詞)
この時期実家に帰らないバーやスナックの女たちがいるので彼女らと戯れに飲むのもよいだろう。実家に帰らない女たちにはなにか家族に会えなかったり、実家に帰りづらい事情でもあるのだろうか。
晦日にはちょっとおセンチになっちゃうけど、別に紅白も見るわけじゃないし、けっこう1人には慣れてきている。でも今年は少し気分的に違う。冬香との恋が芽生えたからだ。芽生えたどころか、もう既に熱く燃えたぎっている。ちょっとウキウキしていたので、明治神宮に初詣に行った。
年が明けると冬香からあけおめメールが届いた。あけおめことよろのほかに「2日の夜にはそちらに参ります」とあった。2日か…楽しみだ。
(16日)
しかし富山から来るのか…その前のメールでは30日から富山に行っているとのことだった。どうやって出てくるのだろう。まあ夫や子供がいたんじゃあ自由になることもそうそうないだろうから、一年に一日くらい仕方あるまい。自由に冬香が過ごしてもええじゃないか(こうは書いてません)。出てくるのも大変だろうに、それでも敢然と困難を乗り越えて私のために東京へ出てくるというのだから、そりゃもう冬香も私のことを愛しているのだ。うへへ。
まったく冬香は見たとこおとなしくて控えめな女性だが、こんなに大胆に私を求めて東京までやってくるんだもんなあ。誰が見たってそんな大胆さを秘めてるなんて分からないだろうなあ、うひょひょ。
あっ、明日の件は大丈夫かな、メールしておこうっと。明日、大丈夫?しばらくすると返事が来て「早く逢いたい。今夜はあなたの名前を枕に書いて眠ります」あー、明日が楽しみだなあ…
つづく。
すいません、途中からガンガンにはしょってしまいました。(追記)細部の誤りがあったので少々訂正しました。
まず内容についてお詫びを。「既に離婚している」と以前書いたような気がしますが、まだ離婚してませんでした。ひとり息子もいました。多分今後出てくることはないでしょう。名前も年齢も明かされないまま一言しゃべって消されてしまいました。淳ちゃんはホント、男を書くときはつまらなそうです(主人公以外)。
菊治の心配はお金と泊まるところのことばかりですね。「優雅なデート」つったって、結局ホテルにしようか自分の部屋にしようか、そこしか考えていないようです。まあ、今回の逢引であんなクイズ的会話しかしてないのに「いろいろ話した」と思える菊治ですから、優雅なデートもへったくれもないもんです。喫茶店では確実に2時間ももたないでしょう。淳ちゃん用語で「優雅なデート」とは「時間を気にしないでねっとりとしたチョメチョメ」のことでしょうか。
あとは「冬香はおとなしめな外見なのに大胆だ、その大胆さは私しか知らない秘密」という一点につき激萌えなようす。明治神宮も激混雑だったろうに、そんなことも全くきにならないほど冬香にお熱のようです。
「最後の恋」とか言って浮かれポンチになっていますが、菊治がしているのは「恋」じゃなくて「肉欲」なので(「性愛」でもない)、そこ間違えないように。試験に出ますよ。