やっぱりか

問題なのはセックスだからじゃないよ。「愛の流刑地」です。
(16日)
あなたが私の体に火をつけた、という言葉は女を目覚めさせたという意味でどこか甘く心地よく、男の自尊心を満足させる。「あなたの責任よ」と言われているようなものだが、そう言われることは男としてうれしく名誉だ。
自分と知り合わなかったらこんなことは知らなかった?と菊治が問うと、冬香はあなたが誘ってくれたからだという。ふと、冬香の友達もそうなのかと聞いてみる菊治。冬香はあまり話したことがないがそうだと思うと言う。(勝手に決めるな冬香)具体的に祥子の名を出してみる菊治。冬香の話によれば、祥子は3年は夫とそういう関係にないという。祥子がその気になれないにもかかわらず、夫に求められるため、それを避けるために仕事を始めたのだという。

「仕事をしていると、断る理由ができるでしょう。だから楽だと…」

淳ちゃん帝国ではすべての行動はセックスが原因らしいです。
(17日)
ピロートークで夫婦のセックスレスについて考える菊治。
菊治も妻と別居するまで10年間関係を持たなかった。セックスレスにはいろいろ理由があるのだろうが、ほとんどは夫の怠慢だと思っていた。だが、冬香の話を聞いてみると妻が避けていることも多いようだ。せっかく夫婦でいるのにこんなに冷ややかになるとは不思議であるが、原因は夫にあるのだと思う。妻が快く受け入れたくなるように導けない夫のほうに問題があると思うのだ。

とにかく、冬香のようにセックスが嫌いだった女性が、これだけ開花したのだから、花が開かないのは、むしろ男の責任、といえそうである。

「こんないい女は初めてさ」
「じゃあ、絶対、離さないでくださいね」

(18日)

いろいろ話すうちに時間が経ったようである。時計を見ると十一時三十分になっている。

名残惜しげに菊治のブツから手を離す冬香。そっちのほうは次回のお楽しみである。
書斎の窓から桜を見て、花見のことを思い出す菊治。これからでは無理だが明後日くらいまでならもちそうだ。冬香の話では週末は雨のようだ。

「桜の季節になると、必ず雨か嵐が来る。桜がきれいすぎるから嫉妬するんだよ」
「本当に、桜は短いですね」
菊治はうなずきながら、自分たちのことが知れたら、桜のように嫉妬されるかもしれないと思う。

あー、やっぱりそう思ってたんだ…びたいち羨ましくない、って言っても淳ちゃんは信じないだろうなあ…
帰り支度を終えた冬香に明日か明後日花見に行かないかと誘う菊治。明日は学校で説明会があるので無理だが、明後日なら平気だという冬香。近くでいいところを探しておくから、と答えると冬香は「はい」とうなずいて玄関に向かう。

その後姿を見ながら菊治は、学校で先生の話をきいている冬香を想像する。
そのあと、他の母親たちと挨拶を交わし、子供のことなどを話し合うのか。そんな冬香は外から見るかぎり、明るく幸せそうで、不倫をしている気配など、微塵も見せないのかもしれない。

つづく。
文藝春秋の淳×麻木久仁子対談読みました。やらな癖とかデベロッパーとか、菊治=淳的話がいっぱい。制約のある普通の主婦が性愛に目覚めていくさまを書きたいそうです。知らなければ穏やかにすごせただろう人妻に火がついちゃってどうしましょう、と。どうも「家に居場所がない」発言を聞いて以来、淳ちゃんが「一夫一婦制は不自然」「一人の人と一生添い遂げるなんて不自然」的発言をしたところで「どうせ家に居場所がないくせに」と思ってしまいどんな言葉もすり抜けてしまいます。淳ちゃん本人はこの小説が万人に受け入れられるものではないと思っているようです。でもその理由は、性愛というものに焦点を置いているからだと思っているようなのですが、そうではなくて質が悪いからだということに早く気づいてほしいです。