子供の身にもなれ

「お母さんだって、オンナなのよ!」「親のそんなナマナマしい面なんて知りたくねえよ…」
愛の流刑地」です。
冬香の啜り泣きは、潮鳴りが消えてゆくようにおさまってゆく。
ごめんなさい、とつぶやいて顔を離す冬香。顔にかかる髪をかきあげてやる菊治。ふふふ、と微笑みあったりする。
10分進めてある部屋の時計が12時50分をさしている。冬香は菊治の手を振り払い、起き上がる。

この瞬間から、冬香は母になったようである。

冬香は帰り支度を始めた。たとえ夜に逢って一泊したとしても、子供を安全に誰かに頼んだ状態でなければ、冬香は出てこない。

それは母親として当然の責務だが、その変りかたは鮮やかである。

1時まであと20分ほどだが、冬香はバスルームで顔と髪を整え服を着て出てくる。
雨の中を駅まで相合傘で送ってゆく菊治。自分が離婚したことを言おうか言うまいか迷っているうちに鳩森神社の手前まで来てしまった。

「実は、最近、離婚をしてね…」

つづく。
何でしょう。小5の子供に「お利口さんにしていてね」と留守番させてセックスにふける冬香に対して日経新聞に苦情電話が殺到したのでしょうか。「冬香は母親としてちゃんとしてる」エピソードの挿入です。ちゃんとしてるといっても、冬香クオリティなので大したエピソードでも何でもありゃしませんが…。まあ、女として燃えまくりだった彼女は、帰宅まぎわになると急に母親の顔を見せるその切り替えの早さに驚く菊治というのがキモなんでしょうけれども、何だか「母親の顔」というよりも、「母親ヅラ」と言いたくなってしまいます。
それにしても冬香、本当に「母親の顔」に戻るというなら、もう少し早くベッドから起き上がってシャワーくらい浴びた方がいいんじゃないかな。いくら菊治の臭いをまとっていたいとしても、母親の顔に戻るなら臭いくらい消そうや。夫に愛情なんてなくて、別に気づかれてもいいや、と思っていても子供にはできるだけ分からないようにしておやりよ。そりゃ小5で気づかないという可能性に賭けているのかもしれないが、「うちのかーちゃん、セックスしてきた」とは思わないとしてもだ、何だかヘンだぞ、ってことくらいは気づいちゃうかもしれないよ。その辺、もうちょっと子供のこと気遣ってやって欲しいなあ。母親だって女です、と言いたいかもしれないが、自分の母親がなまなましい女であることを小学生のうちから見せられる(感じさせられる)のは、ある意味虐待だと思うぞ。小5なんて思春期の入り口(今は真っ只中かも分からないですね)なんだから、性的なことに関して敏感になってる年頃なんじゃないの。