いいんだろうか

読者の知らないところで、主人公は知らない行動をとっている。「愛の流刑地」です。
(9日)
妻と離婚してね…という菊治の言葉に、冬香は立ち止まり「えっ」と聞き返す。

「妻のほうから別れたいと言ってきたので」
「あなたと、別れたいって?」
「誰かと、結婚するらしい」
(中略)
「あまり、うまくいかなかったから…」
そんなことって、あるのですね

君とならよかったという言葉を飲み込んでいる菊治。それを言ってしまうと二人の仲が壊れてしまいそうだ。

「いいなあ…」
「わたしも、1人になりたいわ」

人気のない境内で寄り添う二人。

「接吻を…」(菊治)

傘の中、唇を重ねる。
(10日)
雨中の長い長い接吻。愛を確かめ合った後、2人はまた歩き出す。
駅へ向かう広い通りに出ると、菊治は別れ間際に心弾む話をしたいと思う。

ふと菊治は、書き続けていた原稿が、ようやく上がったことを思い出して、冬香に告げる。
「二日前に、書き上げてね」
すごおい、完成したんですね」
(中略)
「ご苦労さま、よかったわ」

喜んでくれるのは冬香だけだ。妻なら「ああ、そう」とうなずくだけだっただろう。
本になる前の原稿を読みたいという冬香。「今度きっと見せてくださいね」
次の逢瀬は4日後だ。じゃあと別れ、気をつけてね、と菊治は声をかける。
つづく。
離婚したことを告げられた冬香の「そんなことってあるのですね」というのは「へえ、離婚なんてする人いるんだ」という意味なのでしょうか。それとも「(えっ、あなたみたいに素敵な人が妻から別れたいと言われたりするの?ウソ、信じられない。私があなたの妻なら別れたいなんていわないわ)そんなことって、あるのですね」という意味なのでしょうか。
まあどっちでもいいんですけどね、冬香だし。
それはそうと、菊治の新作小説が書きあがっていたなんて初耳です。読者の知らないところでガンガン執筆していたとは。ゴールデンウィークに「この小説が売れたらー、冬香を離婚させてー」と妄想してからも書き進めていたのですね。いやあ驚き。次の4日後の逢瀬では冬香は希望通り生原稿を読むことができるのでしょうか。今度は平日ですから、今日より1時間短い逢瀬です。セックスもたっぷり堪能して生原稿も読んで、さてさて、大忙しの逢瀬になりそうですな!
ま、どうでも、いいや。