バカい

若いというかバカい?「愛の流刑地」です。
翌日から原稿を持って出版社回りの菊治。まずは「恋の墓標」など三作を出版してくれていた明文社へ。あらかじめ役員の鈴木氏にアポ。昔は文芸担当だったが、現在では営業局だという。10年ぶりの再会。互いに少し老け、貫禄もついてきている。

「でも、あなたは若い…」
鈴木が感心したように菊治を見るが、それが恋のおかげであることは、黙っておく。

ええっと、菊治には社交辞令とかちょっとした挨拶とかいうものが通用しないんでしょうか。ホントに若い見た目であっても、真剣に自分も若くなりたいなあ、秘訣は何ですか?とか訊いているわけじゃないよ…。
納得のできるものが書けたので読んで欲しいと菊治。鈴木は献辞を見て恋愛小説ですね、と微笑む。営業に移ってしまったので今の文芸事情がよく分からないと言う鈴木。しっかりした者にも読ませるからと言ってくれたが、菊治がもう一部原稿を渡そうとするとそれは断ってきた。よろしくお願いします、と頭を下げながら、菊治は昔はぜひ原稿を、と頼まれたものだということを思い出す。
「少し時間がかかるかもしれませんが、そのうち連絡します」と鈴木は言う。
菊治は無為に過ごした時間の長さを思う。
つづく。
一応菊治アクションをおこしました。出版社めぐりです。やはり明文社が第一希望なのですね。仲のいい中瀬は後回し。さすがは別世界の住人、そして性のエリート。己の欲望に実に忠実です。若いですね、という言葉にすぐ「だって恋してるんだもん」とくるとは。頭の中は常にピンク色ですね。ちょっとでもそれっぽいことにはすぐ恋反応です。「わたし、恋愛体質なんだよね。常に恋をしていないと死んじゃうの」とカクテルでもかき混ぜながらアンニュイな感じで言いたがる女子に相通じる思考回路です。
さて、明日は中瀬の新生社にでも行きますか?中瀬なら恋バナも聞いてくれるでしょうし、なにせ小説を書けとけしかけた張本人ですから。鈴木さんのようにごまかせるでしょうか。中瀬の友情が問われます。(あるのかそんなもんは)