べーろべろ

で、ナイフはもう戸棚に戻したの?「愛の流刑地」です。
冬香を殺したが、それを冬香は恨んでいないようだ。冬香がかすかに微笑んでいるように見えることからもそうと分かる。
冬香を覆っている浴衣をそっと開くと、すべすべした白い肌がひろがっている。生きていたときと何一つ変わらない。白く気高い体である。白磁の裸像とみまごうばかりである。
「ふゆか・・・」とつぶやき菊治は冬香の胸元に接吻する。体中に接吻をすれば、冬香も甦るかもしれない。
祈るような気持ちで右の乳房をおおうが、信じられないほど冷たい。この冷たさが、死んだということだろうか。冬香の死が定まってゆくのを止めたいと、あの熱さを与えればその死すら止めることができるかもしれない。

あの悶え叫び、狂ったように昇り詰めた、熱い血の迸る体に戻したい。

乳房をわき腹を、臍を下腹を、股間を秘所を、舌が痺れるまで嘗め回す菊治。花蕊の手前もっとも鋭敏な花片を上下左右、舌から煽るように揺らしてみるが、何も変わらず、ラブジュースも冷たいままである。
冬香の体は乳房から花蕊まで、すべて死に絶えたようである。
つづく。
完全に殺っちゃったよ!
まあ、愛する人を手違いで殺しちゃった人からしたら何とか甦らせたい、熱さを注入したら甦るかもしれない、というポンチなことを考えてしまうのは無理からぬことです。ですが問題なのは、それを考えているのが菊治と言うこと。もう何度も言ってますが、菊治の日ごろの行いがひどすぎて、「えー、そんな愛してたっけ??あんた日ごろからバカじゃん。今更なに言ってんの?なに、全身チューで甦るとかオカシイよ菊治よぉ」としか思えないところが気の毒な…淳ちゃん、このあたり渾身の筆力で書いてる感じがします。なんとしても愛する冬香を甦らせたい、そのためならなんだって…みたいな哀しみとせつなさを醸し出そうと必死ですが、何せ菊治なんで(=何せ淳ちゃんの人物描写なので)、そんなせつなさ皆無です。
こういうのは愛深き様子を日常にまぎらせつつ小出しにしておいて、充分読者に菊治の冬香に対する愛を染みとおらせてからどーんと出すから効果的なんであって、日ごろから何だか愛してるとか性のエリートとか言ってるわりにデリヘル人妻的扱いしかしねえよなあ、と思われてる人がこんなんだと別になんとも思えないし、「ああ、またこいつバカ露呈だな」と溜息がでるのです・・・