ニホンゴワカラナイネ

垂れ流し小説「愛の流刑地」です。
(19〜24日)
証拠内容の説明で、司法解剖の報告書を読み上げる織部検事。
頚動脈への強い圧迫→迷走神経の刺激→血圧降下→心臓停止→死亡と読み上げるが、菊治は「ただただ冬香に乞われて圧したことが、司法解剖ではこのように解釈されるとは…」とがく然。司法解剖は文脈を読むとかじゃないので解釈とかそういう問題ではないんじゃね?という読者のツッコミも置いてけぼりのまま、織部検事は読み進めている。「蘇生術を用いていれば助かったかもしれないものを放置しておいたのは生命への軽視である」凛とした声が刃のきらめきのように菊治に迫る。
これがため殺意があったといわれることに激しく違和感を感じる菊治。「違う、間違っている!」と叫びたいが例のごとくだんまり。
まだまだ続くよ織部検事の証拠説明。今度は冬香の夫の供述調書である。人妻かつ3人の子供を持つ母親という家庭的にも社会的にも重要な人物を殺したらどんな悲劇が生じるか、考えれば分かるはずなのに殺してしまうとは、全くもってゆるされない行為であると断じる検事。
菊治は女性検事なら優しくて温情的だと思ったのは間違いだったとようやく気づく。助成ゆえの厳しさを秘めている…
殺人罪に相当する、と言われ菊治は身震いする。そりゃ殺したけんども、刑法まで持ち出して言われると不安でいたたまれない。…ここは法廷ですから、法律持ち出さないと話にならんがな!
そんな菊治におかまいなく、裁判官が北岡弁護士に尋ねる。
「立証はどのようにされますか?」
「冒頭陳述の用意があります」
いよいよ反論である。
弁護士はこの事件は偶発的・突然的なものであると主張した。
なぜならば…第一に被告人は圧倒的に被害者を愛していたから。何度も逢瀬を重ねて経済的な負担もかけていたことからも圧倒的な愛が分かる…らしい。それを聞いた菊治、勝手に「真剱な愛」と言われたと脳内を書き換えて気恥ずかしさを感じる。恥ずかしがってる場合か!
第二に被害者の求めに応じて絞めただけだから。戸惑ったら「意気地なし」と言われたことがあることからも絞め希望は冬香のほうだったのは明白。それを聞いてまたも菊治は脳内トリップ。箱根の夜を反芻して「そうそう、やめちゃったらそういわれたんだモン、もっと絞めても大丈夫だって思ったんだモン、死ぬと思わなかったんだモン、花火の日も同じだモン」と自己弁護。
もう北岡弁護士やるじゃん!な気分で、弁護士が白馬の王子に見える菊治だった。
そんな「白馬の王子」は続けて菊治の殺人が偶発的・突然的である理由の第三を語る。
第三の理由は被告人には被害者を殺す積極的理由がないから。彼女のためならどんな犠牲を払ってもいいと思っていたのだし、順調な恋愛をしている真っ最中なのに殺す必要なんてないではないか、というものである。
ここで証拠として例の「虚無と熱情」を提出する白馬の王子。ノリにノリノリ。献辞のFは被害者の頭文字。出版されたらお祝いね、と誓い合っていたのに殺すわけがない、二人はまさしく相思相愛、精神的だけでなく肉体的にも癒合した大人の成熟した関係だった、体そのものが求め合っていたのだ!と大演説である。

さすがに年の功か、弁護士のいうことのひとつひとつに薀蓄がある。

…それをいうなら含蓄だろ、という普通の突っ込みは軽く流して…
「計画性のない嘱託殺人に相当します!」と〆る北岡。…オマエ、仕事できないじゃろ?
そういうわけで、もともと凶暴性や激情性を持った人間ではないと情状証人を2人申請する北岡弁護士。「然るべく」検察側も冬香の夫と冬香の友人を証人申請。「然るべく」
次回の裁判が11月10日午前10時と決められて閉廷。
冬香の夫…どういう人なのか。自分を憎んでいるだろう、そんな男が法廷で何を言うのだろうか。考えるだけで不安かつ無気味な気持ちになる菊治だが、ちょっぴり会ってみたい気もする。
次の裁判まで1ヶ月もある。とっとと裁いてくれればいいのに、とまたも都合のいいことを考える菊治。ともかく落着かないし不安な毎日だ。
明鏡止水の気持ちにはなれそうもない。そんな自分を人間ができていないのかと思う反面、いや未決状態で穏やかな心境になれという方が間違っている、と自分に甘い菊治。
これからの法廷戦略を弁護士と話し合わなければならないと思う。
検察は殺意があったとして情状酌量の余地ナシ、としたいようだ。一方、弁護側は嘱託殺人を主張する心積もりだ。菊治と弁護士にはここに相違があって、あくまでも興奮のまま思わず絞めたら死んじゃった、と主張したいのだが、弁護士に言わせればそれでは曖昧だから嘱託殺人の方がいいと言うのである。
弁護士は隠れたままになっているボイレコを提供してはどうかと提案する。アレを聞いてもらえばコチラに有利になりますよ、との言葉に、菊治は考え込む。
つづく。
…ボイレコは検事が持ってるんじゃないの?今さら「提供」とかいう次元じゃなかったような…原文がどうだったかは忘れたw。
で、冬香の夫ついに登場(予定)。淳ちゃんイメージでは冬香夫は佐野史郎でしょうか。(さっきまで宮沢りえのドラマを見ていたため)
弁護士が圧倒的な愛とか何とか言っていると、法廷内の空気がやんわりしてきたようなことを書いてましたが、それって「何この弁護士?本物?つか、何その圧倒的な愛って?ヌルっ!」というツッコミの空気でしょうか…そうであってほしい…