ナンや知らんけど

この期に及んで新章スタートしたのな。「愛の流刑地」だったりして。
(6日〜10日)
新章・雪女。
三回目の審理が終わり、次は論告求刑である。どうなるんだろうと不安がつのる菊治。とうとう美雪ちゃんとは気持が通い合わなかった、全然分かってもらえなかった…検事が女性だったからなのか、と考える菊治。女性だったから冬香の気持も分かってもらえると思っていたのに、エクスタシーを知らないから性愛に溺れることを卑しいと考える人だったんだろか…とあくまでも性のエリートとしての姿勢は崩さない。ちぇ、エロスに理解ある人なら優しく接してくれたと思うんだけどな、と思ったりもする。
それに対して北岡くんはようやってくれた、と上から目線で褒め称える菊治。嘱託殺人の路線は納得いかないけど、それ以外はようやってくれた。自分を優しく励ましつつ、男ながら冬香の気持も理解してくれた。ま、あいつもそれなりに女性との交際も経験してるから理解できるんだろうね(ま、俺には劣るけど)、うんうん、そんな気持がにじみ出る菊治である。
さて、どんな求刑になるんだろう。シャープで美人の美雪タンだからこそ不安だなあ…
そんなこんなで23日。朝食に蜜柑が2個ついてきた。天皇誕生日だからだそうだ。はむはむと食す。とにかく流されるしかねえなあ…と思っているとあっちゅうまに大晦日。年越しながら「年が明けたよ」と冬香に囁く。雑煮の餅も2つ。新年の決意は「毅然としていたい」。
そしてまたそんなこんなで論告求刑の日。菊治は朝、軽い下痢。神経性下痢、という言葉を思い出す。今日のことを考えて悶々とし、あまり眠れなかったことが原因だろうか。
しっかりしろ、と自分を励ます。今日は被告人として最後の陳述が許されるが、さて何を訴えようか。

まずはじめに被害者の家族に謝りたい。

しかし言葉だけではお座なりの印象をぬぐえないので、お詫びとしていくらかのお金を贈りたい。

またうわっつらだけの謝罪をする気の菊治。今度はキョムネツ印税が入るせいか、お金を送ることでうわっつらをごまかそうとしているようです。
弁護士と相談したところ、本来なら刑の執行を終えたら罪は許されるから金品を送るのは義務ではないそうだ。…この弁護士は無資格者ですか?…ともかく、「虚無と熱情」は冬香のおかげでできたものだから、半分は冬香に渡していいものだ。だから冬香の遺した子供らに渡すのはごく自然なことかもしれない。マンションの購入費を差し引いても、5、6000万円は渡せそうだ。
弁護士は情状酌量の点でも有利になる、と言うが、自分はそんな打算でお金を渡そうと思っているわけではない。夫はともかく、冬香の子供らにはできるだけのことはしてやりたい。
裁判所へ移動。この日の東京の空は快晴。空気は冷たいが、護送車に差し込む光は優しい。そのぬくもりに癒されたのか、少しお腹は落着いてきた。でも下腹部は疼いている。
落着きさえすれば心配ない、と自分に言い聞かせているうちに開廷の時間である。
傍聴席は今日もいっぱい。弁護士はこれだけ世間を騒がせた事件だから…と言っていた。

彼は何気なくいっただけだが、やはりベストセラー作家が情事の最中に、相手の人妻を絞殺したという事件は、ショッキングでセンセーショナルな事件であったのか。菊治としてはただ深く、ひたすら愛し合った果ての行為だが、醒めて燃えたことのない人たちには異常な、猟奇的な事件としてしか、映らないのかもしれない。

…ベストセラー作家?菊治が?それって、殺人後じゃん…もう忘れられた作家だったじゃん…また記憶が捏造されている上に、性のエリート面だよ…ああもうううんざり。
そして10時には開廷。美雪ちゃん検事は澄んだお声で裁判官にお返事ですって。

今日はグレーのスーツで、胸元にわずかにのぞくシャツの白さが目に沁みるが、検事はそんなこととは無関係に論告をはじめる。

そりゃそうやろ!
美雪ちゃん論告。「刑法199条、殺人罪に該当すると考えます」菊治胃がキリキリ。「殺して欲しいと何度も頼まれた、強い依頼として受け入れたというが、それで殺人が許容されるという論理は成り立ちません」
「ボイレコできくと殺してと言ってるが、性的関係という平常心を失った状態で発せられているから、任意かつ真意にもとずく依頼ではない。よって嘱託の要件を満たさない」そんな検事の主張に心の中で「違う!」と叫ぶ菊治。正常でないときだからこそ自分の本当の思いを冬香は訴えたんだもん、エクスタシーの頂点で愛する人に首を絞められて死ねたらどんなに素敵か、と冬香は間違いなくそう思って願ってたに違いないんだもん!と声に出さずに主張。そんな菊治を置き去りに、検事の論告は続く。
「言われるまま殺した被告人の思慮分別の欠如。戯れや媚を全て本心と断定するのは短絡的で幼稚」「犯罪歴もなく、被害者を愛していた時期があったことも事実ではある」
愛していた時期じゃなくって終始愛していたんだもん、と菊治またも心の中でつぶやく。
さらに美雪ちゃん続ける。「虚無と熱情でも男は冷静で熱情に欠けると書いている。深い洞察力がありながら、殺したのは独善的で自己中心的である」

いまさら、そんな説教じみたことはいわれたくない。菊治は苛立つが、検事は胸を張っていう。

懲役10年が相当です、の美雪ちゃんの声に傍聴席から溜息。
つづく。
もう即日判決出しちゃおうよ。な?うわべだけの謝罪とか、性のエリート上から目線とか、もうお腹いっぱい…情状酌量なんて打算的なものじゃなく、子供のことを考えてますよ〜、っていうポーズもうっとうしいし、この期に及んで美雪ちゃんの胸元見てるのもキモチワルイ。性のエリートっていうより、変態なだけじゃないかと。淳ちゃんに「萌え」を批判する権利はびた一文ないっすね。