ぼーーー。

愛の流刑地」ラシイヨ…
(22日〜24日)
雪女冬香の手助けで自慰完了で落着く菊治。
泣いてもわめいても独房にい、番号で呼ばれる生活は変わらない。この現実の壁の前では逆らう気持ちも打ちのめされてしまう。
一日のうちで激しく逆らう気持のときと諦める気持ちのときとが交錯している。気力が充実しているときはあの織部検事を思う。
どこの大学を出てるのか、どんだけ頭がいいか知らないが、独身であると弁護士からは聞いている。付き合っている男はいるのだろうか。そしてどんなセックスをしているのか。昼間はここまでの妄想も、夜布団に入るとますますエスカレートする。

とにかく、あの女が悦びを知らないことだけは間違いない。

尋問や論告のときは尊大ぶって小憎らしい様子だったが、よく見ると色白で胸もほどほどだ。服を脱がしてみたら美しく艶めいているかもしれん。

むろん、まともにできるわけもないから、どこかに誘い込み、一気に襲う。

菊治、もう妄想か自慰くらいしかやることがないようだ…
「なにをするの」とか「訴えるわよ」とか叫んで抵抗するだろうが、菊治は無言で裸にして犯してやる。腹立ち紛れにやりたい放題の妄想三昧の菊治である。

そこで強引にセックスを重ね、性の快楽を教え込む。ああいう済ました女ほど、一度、悦びを知ったら狂ったように乱れだす。
どうしても検事をしたいなら、そこまで性の悦びを知ったうえで、したほうがいい。そのほうが余程、人のためであり、国のためになる。

…バカじゃねえの。妄想にもほどがあるわい。
妄想はじけまくりの菊治。もう止まらない。法律で飾った織部検事の仮面を引き剥がしたい。そして「国家への反乱」こと自慰終了。どくどく。
今の菊治には哀しいけど自慰することだけが、尊大な法に逆らう唯一の手段である。
そしてまた単調な日々。
他の未決囚や看守は他人のことなど興味がなさげだ。
自分も気力をなくしていくのだろうか。考えると怖くなるが、そのほうが楽になれるかもしれないと思う。
控訴期間は2週間。刑が確定すれば被告人から受刑者となり、刑務所に移されるという。北のほうになることが多いようだ。また、刑務所では家族か親戚しか面会に来られなくなるそうだ。淋しいものである。
投げやりな気持ちになる菊治。じたばたしても3000日弱は獄舎で自由を奪われる。模範囚になったとしてもせいぜい1、2年出所が早まるくらいだ。そんなお恵みはいらねえ。法律に甘え、おもねるのと同じだ。法律を無視して蔑視している俺がそんなことはしない、と家宅決意する菊治。

とにかく、論理や理屈だけが絶対と思い込んでいる、あの法律奴隷の奴等に頭を下げることだけはしたくない。このうえ、彼等のお情けなど欲しくはない。

もうどうせなら、皆に色狂いとか大馬鹿野郎とか言われたい。もう良識ある全ての人に蔑まれて罵声を浴びたい。
判決から4日過ぎ、5日過ぎ、1週間が経った。マスコミはあれだけ騒いでいたくせに、誰もやって来ない。手紙も来ない。中瀬も来ない。だんだん自分ひとりが忘れられているような気がする。
こういう空白な時間にこそと原稿用紙に向かうが、気力が萎えているせいか数行で挫折する。
小説は頭だけを使うものではない。ボクシングのように肉体を酷使し、体力と気力が充実しないと書けないのだ。とりあえず、今は精神を落着かせるのが先決だ。
受刑者になれば軽い作業を課せられるようである。そうしたことをしている方が、気がまぎれて落着くかもしれない。
いろいろ考えているうちに1週間が経ち、息子の高士がやってくる。
「どうしたのだ」「変わりないか?」
ダウンジャケットにマフラーを巻いて現れた高士。
「父さん、大丈夫?」と気を使う。

「俺、最後の判決の日に聴きに行ったよ…」

「父さん、格好よかったよ」

ばっ、バカ息子め!
つづく。
織部検事をひんむいて…のくだりはもうどうしようもありませんな。もうなんとも、東野圭吾直木賞をくれてやった(淳ちゃん目線)のがそんなに気に入らなかったのか淳ちゃんよ、という感じの書きなぐり感です。性の悦びを知ってるか知らないかで求刑に差がでる検事…イヤすぎる…
圧倒的な愛によってやったことは全て無罪にすべし、というのが菊治の主張なんですね。圧倒的な愛があるからこそ、世間の全てに背を向けられるような結果になったとしてもそれを受け入れ、静かに自分と冬香の永遠の愛があれば生きていける、たとえ自由はなくとも…みたいなことにならないところが性のエリートたるゆえんなんでしょうか。自慰自慰自慰、ヒマさえあれば冬香以外の女性をオカズにしてでも自慰。それってホントに愛?単なる性欲じゃね?と超基本に返ってみました。
あの最後の言いたいことも伝わらない主張じゃポイズン、な演説を格好いいと表現する息子が登場しておりますが、この息子は頭に何か虫でもわいてるんでしょうか。